7 juli 2008

Program Note (2007.8.4 BIP公演)

2007. 8/4公演のBarocco Impression Plus! のProgram Noteをupします。

☆ お若い方へ...
奏者による観点に基づいて書かれたプログラムノートです。 レポートや御自身のプログラムに転載しても、点数や評価は絶対にとれません。


■ ジョージ・フリデリック・ヘンデル : オーボエと通奏低音の為のソナタ 変ロ長調 HWV.357
George Friderich Händel(1685 Halle - 1759 London): Sonata pour l'Hautbois solo (in si bemolle maggiore) HWV.357
I.  II.Grave III.Allegro
生前から現代に至るまで常にバロック時代の大作曲家として評価されているヘンデル。 彼はドイツ出身でイタリアに渡った後にイギリスに帰化した、国際的な作曲家でした。 彼の旋律楽器の為のソナタは、1730年頃にロンドンのウォルシュ(John Walsh)から 出版された12のソナタの他に、ケンブリッジのフィッツウィリアム・ミュージアムにある 3つのソナタと大英図書館に1つのソナタの手稿譜が残存しています。ヘンデルは、 これらのソナタについて「当時の私は悪魔にとりつかれたように作曲していたが、 それらは主としてオーボエのためのもので、オーボエは私が気に入っていた楽器であった」と述べた と伝えられています。今日演奏する変ロ長調のソナタは、 先述のフィッツウィリアム・ミュージアムに手稿譜が残されている作品です。

■ ウィリアム・バベル : オーボエと通奏低音の為のソナタ ト短調
William Babell (ca.1690 London? - 1722 London) : Sonata III for a Oboe witha Through Bass in G minor(ca.1725)
I. II.Air III.Hornpipe IV.Giga
バベルはあまり知られていない作曲家だと思いますが、 イギリスのチェンバロ奏者、教会オルガニスト、ヴァイオリニストであり作曲家・ 編曲者として名を馳せたと伝えられています。彼の父も音楽家で、80歳迄ドルリー・レーン劇場の ファゴット奏者を努めていたそうです。その父親から教育を受けたウィリアム・バベルですが、 一説によるとヘンデルからも教育を受けたと伝えられていますが、 それを裏付ける資料は残っていません。先述の通り、長寿の父に対し、 ウィリアムは33歳で亡くなっています。彼の名声はフランス、ネーデルランド、ドイツにまで 及んでいたようで、幾つかの作品は、これらの地域にて出版されました。本日演奏するソナタは ロンドンのウォルシュより出版された「12のソナタ 第2部」(1725年頃)の第3番として おさめられた作品です。

■ アレッサンドロ・ベゾッツィ : オーボエと通奏低音の為のソナタ ハ長調
Alessandro Besozzi (1702 Parma - 1793/1775 Torino) : Sonata per oboe e basso continuo in do maggiore
I.Andante II.Allegro III.Larghetto IV.Allegretto
17世紀中頃から19世紀中頃まで活躍した音楽家一族、ベゾッツィ家。 その一族の多くがイタリアのパルマやトリノの宮廷でオーボエ奏者として仕えた家系ですが、 アレッサンドロも例外ではないベゾッツィ家の一人でした。父親から教えを受け、 13歳でアイルランド守備隊のオーボエ奏者を務め、その後、1728年から31年までパルマ公の 礼拝堂に仕えました。後にトリノのカルロ・エマヌエーレ3世の宮廷においてオーボエ奏者・ 王室楽器奏者総監督として活躍。又、パリのコンセール・スピリチュエル(18世紀フランスの音楽集団) でも演奏した記録が残っています。
このオーボエ奏者アレッサンドロ・ベゾッツィが残した作品よりハ長調のソナタを演奏致します。

■ フランチェスコ・マリア・ヴェラチーニ : ソナタ 第7番 イ短調
Francesco Maria Veracini (1690 Firenze - 1768 Firenze) : sonata Sesta in la minore(1716)
I.Largo II.Allegro III.Allegro IV.Allegro
イタリアの作曲家・ヴァイオリニストで、音楽家及び画家の芸術家系に生まれた フランチェスコ・ヴェラチーニ。叔父のアントニオも優れた音楽家でしたが、 一族の中でも数少ない、芸術とは無縁の薬剤師であった父の元に生まれました。 ヴェラチーニはフィレンツェで生まれましたが、活動の中心はヴェネチアで、 正規メンバーでもないに関わらず、ヴェネチアと言えば皆さん御存知の教会、 聖マルコ大聖堂でのクリスマス・ミサでソリストとしてヴァイオリンを演奏したと伝えられています。 又、ロンドンのオペラ劇場や、ドレスデンの宮廷でも活躍し、 晩年再びフィレンツェに戻り教会音楽家として活動した作曲家でした。 彼は非常に革新的な作曲家であったと見られており、慣習に縛られない独創的な作品を残しています。 1716年出版の「ヴァイオリンあるいはリコーダーと通奏低音の為の12のソナタ」より本日は第7番を オーボエとチェンバロの通奏低音で演奏致します。

■ヨハン・セバスチャン・バッハ : パルティータ第6番 ホ短調 BWV.830
Johann Sebastian Bach (1685 Eisenach - 1750 Leipzig): Partita VI, e-moll BWV.830
I.Toccata II.Allemande III.Courante IV.Sarabande V.Air VI. Tempo di gavotta VII. Gigue
前半でベゾッツィ、ヴェラチーニらの音楽家一族に生まれた作曲家のソナタを演奏致しましたが、 J.S.バッハも皆様御存知の通り、ドイツ アイゼナハの音楽家一族の一人。 1731年に「クラヴィーア練習曲集 第1部 Erster Teil der Klavierübung」として出版された6つの組曲が、 今日「6つのパルティータ」と呼ばれる曲で、彼の初の出版作品となったものです。 バッハは、チェンバロ曲としては「フランス組曲」「イギリス組曲」など多くの組曲を、 又、ヴァイオリンやチェロリュート、管弦楽の為の組曲も含めると非常に多数の「組曲」を残しています。 「組曲」は、バロック時代においては、幾つかの「舞曲」を並べて組まれた作品のことですが、 「6つのパルティータ」は舞曲形式にとらわれない自由さをもっています。 当時次第に「舞曲」が実際に踊られるものから鑑賞曲へと移行していった時代背景を反映した作品だと 言えるでしょう。第6番は、トッカータで始まり、6つの舞曲、即ちアルマンド、 クーラント、サラバンド、エール、ガボット、ジーグで構成されています。

■ ヨハン・セバスチャン・バッハ : オーボエとオブリガート・チェンバロの為のソナタ ト短調 BWV.1020
Johann Sebastian Bach (1685 Eisenach - 1750 Leipzig): Sonata für Oboe und Obligates Cembalo, g-moll BWV.1020
I.Allegro II.Adagio III.Allegro
前半にお聴き頂いた「ソナタ」は旋律楽器オーボエと通奏低音(:チェンバロ・パートに書かれている 音符は左手で弾く低音旋律のみで、右手の弾く音符は全く書かれておらず、ルールに基づく和音を 基本に、即興演奏していくものが通奏低音。バロック時代及び、それ以前の音楽の特徴で 「バロック時代=通奏低音時代」と言われることもある)による作品でしたが、この作品は 「旋律楽器とオブリガート・チェンバロ」の形で書かれています。この違いは、チェンバロ・ パートの右手に音符が書かれている点。バッハ以降の作曲家による、旋律楽器と鍵盤楽器の為の ソナタに、大譜表で右手と左手の音符がしっかりと指示されていることは、ごくごく当たり前の ことですが、バッハの頃は、この形で書かれた作品は、まだ珍しいものでした。
BWV.1020のソナタは、フルートとチェンバロの為に書かれたものですが、 今日オーボエ奏者のレパートリーとしても、よく演奏されている作品です。


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